第三種電気主任技術者(電験三種) 過去問
令和2年度(2020年)
問33 (電力 問33)
問題文
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
第三種電気主任技術者(電験三種)試験 令和2年度(2020年) 問33(電力 問33) (訂正依頼・報告はこちら)
- 地中送電線路は、同じ送電容量の架空送電線路と比較して建設費が高いが、都市部においては保安や最観などの点から地中送電線路が採用される傾向にある。
- 地中送電線路は、架空送電線路と比較して気象現象に起囚した事故が少なく、近傍の通信線に与える静電誘導、電磁誘導の影響も少ない。
- 地中送電線路は、同じ送電電圧の架空送電線路と比較して、作用インダクタンスは小さく、作用静電容量が大きいため、充電電流が大きくなる。
- 地中送電線路の電力損失では、誘電体損とシース損を考慮するが、コロナ損は考慮しない。一方、架空送電線路の電力損失では、コロナ損を考慮するが、誘電体損とシース損は考慮しない。
- 絶縁破壊事故が発生した場合、架空送電線路では自然に絶縁回復することは稀であるが、地中送電線路では自然に絶緑回復して再送電できる場合が多い。
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (3件)
01
[1]正しいです。
文章の通り、建設費が高いながら、
都市部においては、安全面、景観を保つ観点から、
地中送電線路が採用される傾向にあります。
[2]正しいです。
気象現象に起因した事故とは、台風や落雷等によるものです。
地中に埋設されていることから、これらの影響は受けにくくなります。
また、埋設されたケーブルの周囲は地中で土に囲まれており、
周辺の通信線などへの誘導の影響を抑えることができるのも特徴です。
[3]正しいです。
作用インダクタンスに関しては、3線が互いにそれぞれの磁束を
打ち消しあうことから、小さくなります。
作用インダクタンスの公式における log10(D/r) の項が小さくなるためです。
一方で、作用静電容量に関しては、3線が密着している状態から、
公式における 1/log10(D/r) の項の値が大きくなり、
作用静電容量は大きくなることがわかります。
よって、充電電流は大きくなります。
[4]正しいです。
地中送電線路ではケーブルが使用されるため、
架空送電線路の電線と違った損失を考慮することになります。
・誘電体損 → ケーブルの絶縁被覆に起因する損失
・シース損 → ケーブルの金属シース部に発生する損失
一方、架空相線路では電線表面の電界により空気の絶縁破壊が起き、
放電する現象(コロナ放電)による損失(コロナ損)を考慮することになります。
空気の絶縁破壊であることからわかるように、
地中に埋設している地中送電線路においては考慮しません。
[5]誤りです。
架空送電線路において、空気の絶縁破壊が起こっても、
消弧により自然と絶縁が回復します。
「自然と」というと違和感があるかもしれませんが、
落雷などの現象自体は一時的で、永続しないためです。
一方、地中での絶縁破壊はこのような空気の絶縁破壊ではなく、
設備不良など、自然と復旧するものでない場合が多く、
自然に絶縁が回復することは稀であると言えるでしょう。
よって、[5]が正解です。
地中送電線路の短所については、建設コストが高い事のほか、
故障部分の発見が難しいこと、
放熱性の悪さによる送電容量の低下、
を覚えておきましょう。
参考になった数14
この解説の修正を提案する
02
正解は5です。
地中送電線路の特徴(メリット・デメリット)には、下記のようなものがあります。
メリット
・送電面積が小さい。
・電界・磁界の影響が小さい。
・雷の影響を受けない。
デメリット
・送電容量が小さい。
・事故が自然回復しない。
・交流送電の場合、無効電力発生量が大きい。
1.→ 正しいです。
地中送電線路は、ケーブルの引き入れ・引き抜き、接続の作業スペースや接続設備スペース、通電時のケーブルの伸縮を吸収するスペースを確保した設備(マンホール)等が必要となるため、架空送電線路よりも建設コストは高くなります。
しかし、新たに鉄塔を立てる必要がない、景観を壊すことなく設置可能、天候に左右されることが少ない、等の理由により、都市部では地中送電線路を採用する傾向があります。
2.→ 正しいです。
地中送電線路は、ほとんどが地中に敷設されているので、天候の影響に左右されくことが少なく、ケーブル周辺の電界や磁界が小さく、ケーブルが周辺に及ぼす影響を少なく抑えられます。
3.→ 正しいです。
地中送電線路は、電線と地面と同じ電圧のシース間を距離の小さい絶縁物で挟んだ構造となっており、高い交流電圧をかけると、無効電力が発生し、無効電力電流(充電電流)が流れます。
送電距離が長くなるほど、無効電力量は大きくなります。
4.→ 正しいです。
地中送電線路の電力損失には、ケーブルの絶縁体に流れる電流による損失(誘電体損)、ケーブル外部の金属シースに流れる電流のよる損失(シース損)があります。
その他に空気の絶縁が局部的に破壊される現象による損失(コロナ損)もあります。
地中送電線路ではコロナ損失は考慮せず、架空送電線路では誘電体損、シース損は考慮しません。
5.→ 誤りです。
架空送電設備での主な事故原因である雷事故では、空気の絶縁能力は自然に回復して再び使用できるようになります。
しかし、地中送電設備で絶縁物に事故が発生すると、その部分の絶縁能力は失われてしまうため、その事故部分を取り替えるまでは壊れたままで使用することはできません。
参考になった数3
この解説の修正を提案する
03
地中送電線路に関する問題で架空送電線路と比較した際の記述で誤りを選択する形です。
特性を理解しているかが、ポイントとなります。
各選択肢を見ていきましょう。
地中送電線路はその名の通り送電線を地中に埋設しますので、架空送電線路と比較して建設費が高くなります。ただ都市景観には最適であり、国の指針も含めて増加傾向となっております。よってこの記述は正しいです。
地中送電線路は地中に埋設した状態ですので、大雨や雪などの気象現象の影響は受けにくいです。また電線管にケーブルを布設する施工のため静電誘導、電磁誘導の影響が少なくなります。ただ、大規模な地震になってしまうと少なからず影響を受けてしまいがちなので、近年は地震に強い耐震管などの採用も増加しています。よってこの記述は正しいです。
地中送電線路のケーブルは静電容量が大きくインダクタンスが小さいという特徴があり静電容量が大きいと充電電流も大きくなります。静電容量が大きくなると電流の位相が進みとなりフェランチ効果が起こりやすくなります。フェランチ効果とは送電端電圧より受電端電圧の方が高くなる現象です。よってこの記述は正しいです。
地中送電線路では主に絶縁体に架橋ポリエチレンを使用したケーブルを採用しているため、絶縁体に誘電体損という損失が発生します。またケーブルには金属シースも含まれているためシース損も考慮しなければなりません。コロナ損はコロナ放電による損失で空中に設置している架空送電線路では考慮する必要がありますが、地中送電線路ではその必要がありません。よってこの記述は正しいです。
架空送電線路の絶縁破壊事故の原因は空気中で起こる為、一旦消弧されると絶縁が回復する事が多いです。地中送電線路での絶縁破壊事故の原因は空気中での絶縁破壊ではなく、地絡などが主な要因です。なので自然に絶緑回復して再送電できることは稀です。よってこの記述は誤りです。
地中送電線路の問題は必ず1問は出題されているので、怠らず学習していただければ幸いです。
参考になった数0
この解説の修正を提案する
前の問題(問32)へ
令和2年度(2020年) 問題一覧
次の問題(問34)へ