第三種電気主任技術者(電験三種) 過去問
令和2年度(2020年)
問28 (電力 問28)

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問題

第三種電気主任技術者(電験三種)試験 令和2年度(2020年) 問28(電力 問28) (訂正依頼・報告はこちら)

架空送電線路に関連する設備に関する記述として、誤っているものを次の選択肢の中から一つ選べ。
  • 電線に一様な微風が吹くと、電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで、この振動による電線の断線防止が図られている。
  • 超高圧の架空送電線では、スペーサを用いた多導体化により、コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。
  • 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。
  • 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており、遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。
  • 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると、鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は1です。

1.→ 誤りです。

ダンパは、微風によって発生する「微風振動」による疲労を防止するため、電線の支持点付近に設置して振動を防止します。
サブスパン振動とは、風速が数~20[m/s]で発生する振動の中で、特に[10m/s]を超えると、サブスパン内の振動が激しくなることを指します。


2.→ 正しいです。

送電線等において、電線表面の電位の傾きが大きい部分で絶縁破壊を起こし放電するコロナ放電は、コロナ損による電力損失を発生させたり、導体の腐食や電線の振動などを生じさせたりします。

コロナ放電は、電線間隔が大きくなるほど、また導体の等価半径が大きくなるほど、高くなります。よって、1相当たり電線を複数に分けて、スペーサで間隔をあける多導体化方式は、コロナ放電の障害対策として有効です。

また、スペーサは、電線支持部に設置し、強風による電線相互の接近や衝突を防止するため、電線相互の間隔を保持する器具です。送電線に雪や氷が付いた状態で強風が吹くと、送電線の自励振動現象が起きます。送電線が上下に激しく振動するギャロッピング現象の防止にも、スペーサは有効です。


3.→ 正しいです。

アークホーンとは、がいしの両端に設けられた金属電極です。

雷サージにより、がいしの表面に沿って放電するフラッシオーバが起きたとき、アークを電極間に生じさせ、がいし破損を防止します。


4.→ 正しいです。

架空地線とは、送電線路の鉄塔の上部に裸線を張り、鉄塔を通じて接地したものをいいます。
鉄塔の地下に、塔脚接地抵抗を小さくするため埋設地線を設置します。
架空地線は、雷の直撃から送電線を守り、また送電線から通信線への電磁影響を軽減します。

架空地線と送電線とを結ぶ直線と、架空地線から鉛直線の角度を遮へい角といい、遮へい角が小さいほど、直撃雷から架空送電線を遮へいする効果が大きくなります。


5.→ 正しいです。

逆フラッシオーバは、雷が鉄塔に直撃したとき、鉄塔や架空地線から電力線へと放電が発生する現象です。
塔脚接地抵抗が高いと、その分だけ架空地線や鉄塔電位が上昇することにより、架空地線、鉄塔腕金、碍子から送電線に電流が流れます。
よって、埋設地線で鉄塔と大地の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバを抑えることができます。

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02

[1]誤りです。

この文章の内容は、サブスパン振動ではなく「微風振動」についての

内容になっています。

サブスパン振動とは、多導体の送電線に対し、

受ける風が一定の風速(10m/s)を超え、

導体の固有振動数と一致することで、

サブスパン(スペーサ間)において振動する現象です。

[2]正しいです。

コロナ振動とは、空気の絶縁破れによるコロナ放電時に、

電線上の水滴が射出され、その反力として電線が振動する現象です。

[3]正しいです。

アークホーンとは、がいしを保護する役割の金属電極です。

絶縁破壊が生じた際に、がいしの表面で放電せず、

アークホーンの先端で放電が起こるようにして、がいしの破損を防ぎます。

[4]正しいです。

架空地線とは、送電線鉄塔の最上部に張られる接地線です。

送電線への直接落雷を防ぐことを目的としています。

架空地線の鉛直線と、架空地線と送電線を結ぶ直線のなす角度を、

遮へい角と呼び、これが小さいほど遮へい効果は大きくなります。

[5]正しいです。

埋設地線は鉄塔から大地への接地線です。

鉄塔の塔脚接地抵抗を小さくし、落雷による鉄塔の電位上昇を抑制することで、

逆フラッシオーバーを防止します。

逆フラッシオーバーとは、架空地線や鉄塔への直接落雷によって、

鉄塔の電位が送電線より高くなることで、

鉄塔から送電線への放電が起き、大電流が電線への流れる現象です。

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03

架空送電線路に関連する問題で、誤った記述を選択する形となります。

ポイントは自然現象に対する送電線がどのような動きになるかを理解しているかになり、似たような文言との区別できるかになります。各選択肢を見ていきましょう。

選択肢1. 電線に一様な微風が吹くと、電線の背後に空気の渦が生じて電線が上下に振動するサブスパン振動が発生する。振動エネルギーを吸収するダンパを電線に取り付けることで、この振動による電線の断線防止が図られている。

文中の電線が上下に振動するのはサブスパン振動ではなく微風振動の記述となります。よってこの記述は誤りです。

サブスパン振動は送電線に風速10m/sを超える風が当たったときに発生する振動です。

選択肢2. 超高圧の架空送電線では、スペーサを用いた多導体化により、コロナ放電の抑制が図られている。スペーサはギャロッピングの防止にも効果的である。

コロナ放電とは架空送電線の表面上の電界が空気の絶縁耐力を超えてしまうと空気上の絶縁が破壊され電線表面から放電する現象です。対策の一つとしてスペーサを用いた多導体化があり、スペーサはコロナ放電発生時に伴う振動対策として有効です。よってこの記述は正しいです。

選択肢3. 架空送電線を鉄塔などに固定する絶縁体としてがいしが用いられている。アークホーンをがいしと併設することで、雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしを保護することができる。

アークホーンとは連結したがいしの両端に取り付ける金属製の金具で、がいしと併設することで雷撃等をきっかけに発生するアーク放電からがいしの破損を防止することができます。よってこの記述は正しいです。

選択肢4. 架空送電線への雷撃を防止するために架空地線が設けられており、遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きい。

架空地線は鉄塔の最上部に張られる接地線で送電線の雷害対策として用いられます。直撃雷が架空地線に落ちた場合に、架空地線と電線とを結ぶ直線のなす角を遮へい角と言い、遮へい角が小さいほど雷撃防止の効果が大きくなります。よってこの記述は正しいです。

選択肢5. 鉄塔又は架空地線に直撃雷があると、鉄塔から送電線へ逆フラッシオーバが起こることがある。埋設地線等により鉄塔の接地抵抗を小さくすることで、逆フラッシオーバの抑制が図られている。

逆フラッシオーバとは鉄塔や架空地線に落雷が落ちた時に、元々の電位よりも非常に大きい電位が鉄塔や架空地線に流れがいしの絶縁が破壊され送電線に雷撃からの電流が流れてしまう現象を言い、対策の一環として鉄塔の接地抵抗を小さくすることで落雷が発生したとしても送電線ではなく埋設地線の方に電流を流れていきます。よってこの記述は正しいです。

まとめ

送電関連の専門的問題と言えます。覚える単語も多いので丸暗記も必要とはなりますが、過去問をより多く問いていく事で自然と身につくと思います。

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